「シーベルト」って何ですか? その1

実効線量と等価線量

シーベルトという用語を聞いたこともあるかと思いますが、ではシーベルト(Sv)っていったい何でしょうか?

シーベルトとは放射線の人体への影響度合いを表す単位です!
放射線が人体に与える影響は、同じ吸収線量でも放射線の種類やエネルギー、そして放射線を受ける身体の部位によって異なり、それらを考慮した線量数値の単位がシーベルトです。
ですが、シーベルトといっても、実は様々な線量の単位として用いられています。

例えば、等価線量(Sv)、実効線量(Sv)、1センチメートル線量当量(Sv)、70マイクロメートル線量当量(Sv)などです。それらの単位は同じシーベルトですがそれぞれ定義が異なります。

ここでは、シーベルトのなかでも、等価線量(Sv)、実効線量(Sv)について説明します。
等価線量とは、吸収線量に放射線加重係数を乗じたものです。すなわち吸収線量が同じであっても、その放射線の種類等によって人体影響の度合いが異なるため、それを補正したものが等価線量です。

一方、実効線量とは、人体各組織臓器の等価線量に、その組織臓器の組織加重係数を乗じ、そしてすべての組織臓器について和をとったものです。つまり全身の放射線影響すなわち放射線誘発ガン等のリスクに関係するものになります。仮に全身の組織臓器が同じ等価線量を受けても、各組織臓器の放射線感受性の違いによって、各組織臓器の放射線影響の度合いが異なるため、それを考慮し補正したものが実効線量です。

実効線量は確率的影響(放射線誘発ガン等)のリスク評価の際に用いられています。なお新聞報道等で使用されているシーベルトと言う表記は、多くの場合この実効線量のことを指しているものと推察できます。

ところが、上記した実効線量と等価線量は実際に測定することは不可能です。人体の各組織臓器に、実際に線量計を埋め込んで線量測定することはできませんので。
そこで、外部被曝による等価線量と実効線量を推定するために、測定可能な指標として、これも単位はシーベルトですが、70マイクロメートル線量当量および1センチメートル線量当量が使用されています。

70マイクロメートル線量当量と1センチメートル線量当量については、別に(その2で)説明します。
「シーベルト」という用語が日常的に使用されていますが、上述したように、ひと口にシーベルトといっても、それは種々の線量の単位として使用されているため、本来はそのシーベルトが何の線量と定義されたものであるのかを、明示して用いなければなりません。

ただし、通常、シーベルトは「実効線量」としての意味で用いられているように見受けられます。その場合でも、「実効線量」などは実際には測定不可能なものなのです。

文責:千田 浩一
災害医学研究部門 災害放射線医学分野 教授

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