「シーベルト」って何ですか? その2

(1センチメートル線量当量と70マイクロメートル線量当量)シーベルトという用語を聞いたこともあるかと思いますが、ではシーベルト(Sv)っていったい何でしょうか?

その1にお示したように、シーベルトは放射線の人体への影響度合いを表す単位ですが、シーベルトといっても、実は様々な線量の単位として用いらています。例えば、等価線量(Sv)、実効線量(Sv)、1センチメートル線量当量(Sv)、70マイクロメートル線量当量(Sv)などで、それぞれ定義が異なります。

ここでは、1センチメートル線量当量(Sv)、70マイクロメートル線量当量(Sv)について説明します。
実効線量と等価線量は、別記しましたように、実際に測定することは不可能です。(人体の各組織臓器に、実際の線量計を埋め込むことはできません。)

そこで、外部被曝による等価線量と実効線量を推定するために、測定可能な指標として70マイクロメートル線量当量および1センチメートル線量当量が使用されています。70マイクロメートル線量当量および1センチメートル線量当量は、人体軟部組織等価モデルを用いて評価され、その人体モデルに放射線が入射した表面から70マイクロメートルおよび1センチメートルの深さの点の線量をもって、それぞれが定義されています。そしてそれら単位は一般的にシーベルトです。
たとえば、皮膚の等価線量は70マイクロメートル線量当量を用いて評価しています。

一方、実効線量は、1センチメートル線量当量を用いて評価します。(かなり大胆な推定評価であると思う方もいるでしょうが・・・。) これは、コンピュータシミュレーション等の結果ら、1センチメートル線量当量をもって実効線量とすることは、実効線量を過大評価することはあっても過小評価することはないことがその理由となっています。すなわち、1センチメートル線量当量をもって実効線量とすることは、実効線量を安全側(過大)評価するという点で、放射線防護上は妥当であるという考えです。

なお、実際の線量測定に使用している測定器(放射線従事者用の個人線量計など)は、そのレスポンスを近似させることで、1センチメートルおよび70マイクロメートル線量当量を実測することが可能なっており、これらの測定値から、実効線量や等価線量を推定評価しています。

一般では「シーベルト」という用語が日常的に使用されていますが、上述したように、シーベルトといっても、それは種々の線量の単位として使用されているため、本来はそのシーベルトが何の線量と定義されたものであるのかを、明示して用いなければなりません。

ただし、通常、シーベルトは「実効線量」としての意味で用いられているように見受けられますが、その場合でも、「実効線量」は測定不可能であり、外部被ばくの場合は、1センチメートル線量当量をもって「安全側」に実効線量が推定評価されています。

文責:千田 浩一
災害医学研究部門 災害放射線医学分野 教授

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